研究概要
研究テーマ: 「ウガンダ共和国の首都カンパラで公演されるショー・パフォーマンスに関する文化人類学的研究」
■目的 :
東アフリカに位置するウガンダの首都カンパラでおこなわれているショー・パフォーマンス「カリオキ」を中心としたエンターテイメントに従事する人びと(特に若者)の文化人類学的な調査を通して、アフリカの都市における人びとの社会関係を考察することを目的とした研究をおこなっている。
1980年代半ばまでは政治的に不安定だったウガンダでは、ムセベニ政権が成立後、経済の向上、所得の増加、治安の安定に従い、現在ではテレビや映画、そしてクラブなどでおこなわれるエンターテイメントの分野が発達してきている。その流れを受けてカンパラでは、2000年ごろから大衆娯楽としての「カリオキ」が人気を博し、毎晩のようにレストランやバーでおこなわれるようになった。この「カリオキ」をしている人びとは 10代から20代の若者たちであるが、民族出自や学歴などの社会背景は多様であり、「カリオキ」のみから現金収入を得ているものから、学生や会社員であるものもいる。 博士論文では、この多様な生き方をしている若者たちがいかにともにショーをつくりあげているかを明らかにするために、かれらが形成するグループの構成や公演実施に当たっての実践を分析した。
■抱負:
アフリカの都市に生きる人びとにとっての「舞台に立つこと」について考えていきたい。アフリカに植民地化以前から存在した儀礼のなかではパフォーマンスを見る人と見られる人の境界がなかったが、そこに西欧社会から観客と演じ手がわかれる「舞台」がもち込まれた。現在、ある人びとは「舞台」にあがろうとし、またある人びとはその「舞台」にむかって拍手を送る。アフリカの都市において「舞台」とはどのような装置であり、どのような効果をもっているのかを丹念に追っていくことで、アフリカの都市における「見ること見られること」について考えたい。そしてさらには、アフリカに限らず「人が人を見ること、見られること」について考え続けていきたい。
■学歴:
2005年3月 大阪外国語大学(現大阪大学)外国語学部地域文化学科スワヒリ語専攻 卒業
2006年4月 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科一貫制博士課程 入学
2012年3月 同上 研究指導認定退学
2013年7月 博士(地域研究)取得
■職歴:
2008年9月~2009年2月 京都精華大学人文学部文化表現学科 ティーチングアシスタント
2008年12月~2010年3月 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 リサーチアシスタント
2010年4月~2012年3月 日本学術振興会特別研究員DC2
2011年10月~2014年3月 京都文教大学 非常勤講師(『アフリカの歴史と文化』担当)
2012年4月~2016年3月 京都大学アフリカ地域研究資料センター 非常勤研究員
2013年9月~2015年3月 神戸山手大学 非常勤講師(『フィールドワークⅠ』担当)
2013年9月~2016年3月 大阪府立大学 非常勤講師(『文化人類学入門』担当)
2016年4月~現在に至る 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 特任研究員
2016年5月~現在に至る 北海道大学国際連携機構アフリカルサカオフィス 特定専門職員
■業績一覧:
◇著書
『ショー・パフォーマンスが立ち上がる:現代アフリカの若者たちがむすぶ社会関係』春風社、2015年
「都市(みやこ)の夜の夢:ウガンダとインドの舞台芸能を担う者達」『2008年度大学院教育改革支援プログラム院生発案共同研究報告書』京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、2009年(飯田玲子氏との共著)
◇論文
「学校から盛り場へ:ウガンダの首都カンパラにおける若者文化「カリオキ」の大衆化の過程」『アフリカ研究』第89号、pp.15-27、2016年(査読あり)
“Participating in African Popular Culture as a Researcher: A Case of Becoming a Karioki Performer in Uganda,” In Wakana SHIINO, Tom ONDICHO and Soichiro SHIRAISHI eds., Re-Finding African Local Assets and City Environments: Governance, Research and Reflexivity, JSPS Nairobi Research Station and The Research Institute for Languages and Cultures of Asia and Africa, pp. 77-93, 2016.
「ウガンダの首都カンパラにおける若者たちの社会関係:現代アフリカのサブカルチャー〈カリオキ〉を事例にして」『アジア・アフリカ地域研究』第10-2号、pp.144-175、2011年(査読あり) https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/dl/publications/no_1002/AA102_4_daimon.pdf
「『ムヤーイェ』とはだれなのか:アミン時代のウガンダに発生したある社会的カテゴリーの現在」『スワヒリ&アフリカ研究』第22号、pp.79-94、2011年(査読あり)
“Ways Youth ‘Own’ Popular Music at Karaoke (Karioki) Entertainment in Kampala, Uganda” In Mitchel Strumpf and Imani Sanga eds., Readings in Ethnomusicology: A Collection of Papers Presented at Ethnomusicology Symposium 2010 Uganda. Dar es Salaam: Department of Fine and Performing Arts, University of Dar es Salaam, pp. 138-142, 2010.(査読あり)
「『出会い』が繰り返される場における他者の受け入れ技法―ウガンダ・カンパラの『カリオキ・ショー』の実施現場から―」『多民族研究』第3号、pp.26-33、2009年
「アフリカの都市におけるショー・パフォーマンスの新たな展開―ウガンダの首都、カンパラの『カリオキ・ショー』をする若者たち―」『生態人類学会ニュースレター』第13号、pp.32-36、2008年(査読あり)
「アフリカの都市における若者の労働事情」、『実践的地域研究〈2006年度‐2007年度〉フィールドワークインターンシップ実施報告書』、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、pp. 113-115、2008年
「パフォーマンスを職にする若者たちの労働事情と社会関係―ウガンダの首都カンパラのカリオキ・ショー―」『実践的地域研究: 魅力ある大学院教育イニシアティブ・隣地教育研究による実践的地域研究者の養成〈平成18年度~19年度〉フィールドワーク・インターンシップ実施報告書集』京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、pp. 116-118、2008年
‘Karioki Show: The New Popular Entertainment in Kampala’ in Proceedings of the Joint Symposium in Kampala, 2007 “Re-contextualizing Self/Other Issues Toward a Humanics in Africa”, pp.37-39, 2007.
◇解説、総説など
「口パクを聴く:ウガンダのショー・パフォーマンスの現場から」『アカデミック・ジャーナリズム シノドス』2016年2月9日掲載 http://synodos.jp/international/16102
「ウガンダでパフォーマーになる:「調べる」ことと「なる」こと」椎野若菜・白石壮一郎編『フィールドに「入る」方法(フィールドワーカーシリーズ1巻)』古今書院、pp.184-197、2014年
「ウガンダ・カンパラの新興『ミュージカル』: デジタル技術を操る若者たち(〈特集〉途上国のエンターテイメント事情)」『アジ研ワールド・トレンド』No.203、pp.18-19、2012年 http://d-arch.ide.go.jp/idedp/ZWT/ZWT201208_011.pdf
「へき地へ『つながり』を提供するグラミン銀行のヴィレッジ・フォン」羽渕一代・内藤直樹・岩佐光広編『メディアのフィールドワーク:アフリカとケータイの未来』北樹出版、pp.19-20、2012年
「都市の若者たちの社会関係を映すケータイ利用」羽渕一代・内藤直樹・岩佐光広編『メディアのフィールドワーク:アフリカとケータイの未来』北樹出版、pp.67-68、2012年
「新刊ライブラリー エチオピア音楽民族誌: ファラシャ/エチオピア正教/望郷歌(テゼター)」『JANESニュースレター』第19号、pp.27、2012年
「ガンダ語のポピュラー音楽」白石壮一郎・吉田昌夫編『ウガンダを知るための53章』明石書店、pp.234-238、2012年
「カンパラのエンターテイメント最前線―カラオケの登場!?」白石壮一郎・吉田昌夫編『ウガンダを知るための53章』明石書店、pp.239-243、2012年
「カンパラ育ちのサバイバー」白石壮一郎・吉田昌夫編『ウガンダを知るための53章』明石書店、pp.244-246、2012年
「ウガンダの演劇文化」白石壮一郎・吉田昌夫編『ウガンダを知るための53章』明石書店、pp.252-256、2012年
「ウガンダの劇作家たち」白石壮一郎・吉田昌夫編『ウガンダを知るための56章』明石書店、pp.257-261、2012年
「華やかな〈だます〉物語に魅せられて: ウガンダ・カンパラの人気劇団〈エイボニーズ〉」『アフリカ文学研究会会報Mwenge』第41号、pp.11-15、2011年
「ウガンダの首都、カンパラの舞台に登場した〈白人〉」『アジア・アフリカ地域研究』第10-1号、pp.83-89、2010年 http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/139448/1/aaas_10_83.pdf
「都市に飛び込む」NPO法人アフリック・アフリカ エッセイ集編集委員会編『アフリカで育つ』NPO法人アフリック・アフリカ、pp25-26、2010年
■学会活動:
生態人類学会、日本文化人類学会、日本アフリカ学会、日本ポピュラー音楽学会、日本ナイル・エチオピア学会
■社会活動:
NPO法人アフリック・アフリカ理事
[NPO法人アフリック・アフリカ( http://afric-africa.vis.ne.jp/index.htm )にてエッセイを執筆]
■受賞歴:
2016年4月 第22回日本ナイル・エチオピア学会高島賞 受賞(受賞対象:『ショー・パフォーマンスが立ち上がる:現代アフリカの若者たちがむすぶ社会関係』[春風社、2015年])
2014年2月 第7回スミセイ女性研究者奨励賞 受賞(住友生命「未来を強くする子育てプロジェクト」より)